【失踪日記・アル中病棟】漫画家吾妻ひでおに学ぶ「アルコール依存症」

吾妻ひでおとは?

1950年、北海道生まれの漫画家です。10代で上京し、一般企業やアシスタントを経て1969年に漫画家デビュー。「ふたりと5人」「やけくそ天使」などのギャグ作品や「パラレル狂室」などのSF、アニメ化した「ななこSOS」など様々な作風で各方面から支持を得ています。
Twitterでは制作中の漫画の様子やペットの様子をツイートしたり、ファンの方とかかわったりしていました。自撮りを載せちゃうお茶目な一面も。

そんな多忙なスケジュールに追われる1980年代末、吾妻氏はある日突然失踪してしまいます。失踪のきっかけは?失踪後はどのように生活していたの?その後の顛末は「失踪日記」をご覧ください。リアリズムを排除してポジティブに描かれた実話ベースの作品です。作品中に練馬区の公園も登場するのでチェックしてみてください!
続編である「失踪日記2 アル中病棟」でも、吾妻氏の波乱万丈な人生がコミカルに描かれています。「失踪日記2 アル中病棟」では、アルコール依存症になった吾妻氏の入院生活をもとに、アルコール依存症の恐ろしさや病気への向き合い方について医師監修のもとで描かれています。300ページ以上からなる大作漫画ですが、1作目同様暗くなりすぎておらず、たくさん登場するキャラクターもひとりひとりがキャラとして立っているので夢中になって読むことができました。「逃亡日記」は前2作の続編というよりは番外編のような印象です。インタビュー形式で吾妻ひでおの人生を振り返る作品。
吾妻氏のファンはもちろん、アルコール依存症の方、ご家族の方、そうでない方でも楽しめると思います。

アルコール依存症って?

人気漫画家吾妻氏をも苦しめたアルコール依存症とは、長期にわたって大量のお酒を飲み続けることで、お酒がないといられなくなる状態になること。適量の飲酒は健康にいいとされていますが、飲みすぎが習慣化してしまうと精神面・身体面にも影響を及ぼし、仕事ができなくなるなど生活面にも支障が出てきます。時間や場所を選ばずどうしてもお酒が飲みたくなり、いつまでも飲み続けてしまう人もいます。身体が「飲みすぎ」の状態に慣れてしまい、「飲んでいる状態が普通」と勘違いを起こしてしまいます。そうするとアルコールが抜けることで、イライラや神経過敏、不眠、頭痛・吐き気、下痢、手の震え、発汗、頻脈・動悸、幻覚、幻聴などの症状が出てきます。その症状を抑えるために、また飲んでしまうという負の連鎖が起こります。
現在日本国内にいる患者数は80万人以上といわれていますが、アルコール依存症は進行性の病気のため予備軍も含めると約440万人にもなると推定されています(厚生労働省より)。アルコール依存症を発症してることに気付かず、または認識していても治療を受けずに放置している人も多くいます。

アルコール依存症のサイン

アルコール依存症になると以下のような症状がよく見られます。さらに、世界保健機関(WHO)によると、アルコール依存症は60以上もの病気や外傷の原因になると指摘されています。

精神的な症状

・授業中や仕事中、身体を壊している時など飲酒すべきでない時にも「飲みたい」と強く思う
・飲み始めると、飲む前に思っていた量よりも多く飲んでしまう
・手元にお酒がないと落ち着かない
・連続飲酒(数時間ごとに飲酒すること)をする
・うつ病、不安障害、パニック障害など

身体的な症状

・酔いがさめると、次のような離脱症状(禁断症状)が出る
―手のふるえ、多量の発汗、脈が早くなる、高血圧、吐き気、嘔吐、下痢、イライラ、不安感、うつ状態、幻聴、幻覚
・肝炎や脂肪肝、膵炎などの疾患や、生活習慣病、消化器系のがんなどの原因となる

自身のアルコールへの依存度を簡易的にチェックできるテストがあります。お時間がある方は一度チェックしてみてください。
アルコールへの依存度チェック
多くの症状をあげましたが、これらはあくまで目安です。気になる症状がある場合は医師・専門家へそうだんしてくださいね。

治療の方法は?


日本では入院治療が主体です。吾妻氏も入院による治療に取り組みました。治療といっても、再び依存せずに飲酒できるようにするのではなく、完全にお酒を断つことが目的となります。
病院によって違いはありますが、主に次のようなことを行います。
・精神・身体合併症と離脱症状の治療
・お酒に対する正しい知識の提供
・本人に断酒決意
・抗酒剤を服用する
・退院後も断酒を継続できるよう、断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)の自助グループへ導入
・家族や職場への調整
退院後のアフターケアは、「1) 病院・クリニックへの通院、2) 抗酒薬の服用、3) 自助グループへの参加」の三本柱で進めるのが一般的です。
入院治療では行動が制限され、専門家がすぐそばにいますから、再飲酒してしまうリスクは低いと考えられます。デメリットとしては、仕事をしている人は仕事を休まなければならない、外来よりも治療費が多くかかるというところでしょうか。ですが、最悪の場合はにすらつながってしまう病気ですので、徹底的に治療するのが安心かと思います。
一時的にお酒をやめることができても、また一度でも飲むとまた元の状態に戻ってしまうので、確固とした意志で断酒をする必要があります。本人が治療に対して積極的に取り組むこと、家族をはじめ周囲の人のサポートがとても大切です。

練馬断酒会

練馬区で活動する、アルコール依存症に苦しむ方とそのご家族を支える会です。東京断酒会を上部組織としており、都内の各地域にも断酒会があります。アルコール依存症から回復した人や家族や仲間とお酒をやめ続けている人がたくさんいます。同じ経験・似た経験をした人との関わりで、自身の不安や悩みを共有することができます。
吾妻氏も会員として活動に参加していました。吾妻氏の逝去後、ご家族・出版社の厚意でホームページに「失踪日記2 アル中病棟」の漫画を掲出しています。

活動理念

1、アルコール依存症の方がお酒を飲まない生活を取り戻し、家族と共に自分らしい人生を新たに歩めるように支援する
2、アルコール依存症や酒害に関する正しい情報の提供や啓発活動を行っていく
3、アルコール依存症の回復を目指す方が周囲とつながり、支え合える社会になるよう働きかける

活動内容

例会・家族会と呼ばれるミーティングを開催しています。アルコール依存症の本人と家族が集まり、体験談や悩みを語り合います。
その他、地域での酒害相談や研修会、会員・家族による親睦会など様々な活動をしています。練馬区で開催される「健康フェスティバル」に毎年出展しているので、見かけたことがある方もいるかもしれませんね。
家族と暮らしている方の場合は家族の協力が大きな支えとなります。

アルコール依存症のご本人・そのご家族だけでなく断酒に賛同する方や関心のある方であればどなたでも入会できます。

練馬断酒会
URL:https://www.nerima-danshukai.org/
電話:080-1287-6688
受付時間:(月曜〜土曜 10:00〜18:00)

アルコール依存症にならないためには?


「飲みすぎ」の状態にならないことが重要です。
厚生労働省が推進する「健康日本21」での1日あたりの適度な飲酒の量は、ビールでいうと500ml。日本酒なら1合弱、25度の焼酎なら100ml、ワインなら2杯程度とされています。この3倍以上のアルコールを摂取すると「飲みすぎ」となり、アルコール依存症へのリスクが高まると警告されています。
ビール3本以上は飲みすぎ。お酒が好きな人からしたらこの量は物足りないかもしれません。また、職場や友人同士での飲み会では、「もっと飲もう」「お酒足りてないんじゃないの?」と周りから勧められて断れない、なんていうケースもありえますよね。近年「アルハラ(アルコールハラスメント)」という言葉を耳にするようになりましたが、職場の上下関係のない友人同士でも、周囲にお酒を強要しないよう気を付けたいです。自身でも日ごろから飲む量を調整し、週に1,2日は休肝日を設けるようにしましょう。

まとめ

アルコール依存症についてご紹介しました。様々な合併症を起こす恐ろしい病気ですが、病気だけでなく人間関係の破綻にもつながる恐れがあります。
お酒をやめられないせいで家族や友人が離れて行ってしまったり、仕事に行けなくなり退社となってしまったり。治療を始めたとしても、本当に飲んでないでしょうね・・・?と疑われてしまったりすることがあるそうです。
健康と良好な人間関係のためにも、是非適度な量を守って飲酒してくださいませ~!

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