ねりまプレミアム付商品券はあまり嬉しくない商品券?

はじめに

令和3年の7月1日からねりまプレミアム付商品券の申し込みの受付が開始された。企画の趣旨としては新型コロナウィルス感染症の影響でより厳しい状況にある商店街を応援するというものである。

販売価格は1組5,000円で500円券が13枚綴りになっている。これは5,000円を支払うと500×13=6,500円分の現金としてできるという意味で、差額の1500円分(30%)がプレミアム分というわけだ。

ちなみにプレミアム=premumとは「割り増し」の意味である。

なぜ、練馬区のプレミアム商品券はすべての商店で使えないのか?

ところがこのプレミアム付商品券、練馬区のすべての商店で使えるわけではなく、練馬区の商店会に加入しているお店でしか使えないのだ。

具体的には現在の練馬区で商いを営んでいる事業者は2万を超えているが、そのうち商品券を使える商店街連合に加盟しているのはわずか1300店舗ほど。約6.5%のお店だけが恩恵を受けられる。

ここでねりまプレミアム付商品券の公式ページを確認してみよう。

このページの下の方にある赤字で書かれた「注意事項」を見ると「大型店では使用できません」と赤線で強調されている。

ここで疑問に思ったのは、なぜ今回のプレミアム付商品券は

・使用できる店舗数が1300店舗(練馬区の店舗数の約6.5%)
・大型店では使用できない

という制限があるのだろうか?

換金手続きを行う銀行の負担が大きい

商品と交換したプレミアム付商品券は商品券なので、最終的には現金あるいはお店の銀行口座に入金する必要がある。それを行うのは銀行なのだが、銀行にとって商品券とはどのようなものなのだろうか?

地元の信用金庫で働いているCさんに話を伺うと、どうやら商品券というのは銀行員にとってはかなり嬉しくないものらしい。その理由は国が絡んでいるので実際に現金化されるまでの手続きが複雑なことと、商品券を数えることがとても骨の折れる作業だからである。

一口に商品券といっても、サイズや重さや素材などの仕様が一律に決められているわけではない。千円札ぐらいの大きさのものもあれば、電車の切符ぐらいのサイズのものもある。

様々なサイズの商品券を数える機械なんてものは当然存在しないので、銀行員が1枚1枚手作業で数える必要がある。そして1人が1度数えただけでは信用できないので他の人が再度数え直す(これを再鑑という)が終わったら、顧客が持ち込んだときに記入した枚数と1人目が数えた枚数、再鑑した人が数えた枚数が一致したらようやく数が正しいと言える。

さらに、市区町村によっては、使用済みであるという印をつけるために商品券の一部を切り取る必要があったり、商品券の裏に持ち込んだお店の名前を書かなければならなかったり、さらに受け入れ金融機関の出納印が必要だったりする。

数枚ぐらいならこれらの作業も対して負担にはならないが、大手スーパーなどから持ち込まれる商品券は500枚を超えることもあるのでその1枚1枚に出納印を押したり、裏面に記述したはずのお店の名前が抜けていないかチェックしたり、使用済みで切り取りを忘れていないか確認する必要がある。

これらの作業だけで数人の銀行員さんの時間が1日潰れることを考えると、商品券は銀行にとって負担にしかならない。

昨今の銀行では人員整理が行われてどこも最低限の人数で窓口を回している。そんな状況でたった数名といえども、人員を取られるのは大きな痛手である。

そして、苦労して商品券を処理して口座に入金されたとしても、お店の人はそのお金をすぐに引き出してしまうので、銀行としては1円の利益にもならない。

換金まで期日が長い場合資金繰りに困るので店舗側が使いたがらない

一方、商品券を銀行に持ち込むお店側はどうだろうか?実は商店側も商品券によって負担が増えるのである。銀行と同じように集まった商品券を1枚1枚数えなければならないからだ。

また「プレミアム付」商品券のような割増で使用できる商品券の場合、普段扱いなれている千円札などと違って計算ミスが発生する可能性がある。

今回ねりまで発行される商品券は30%割増で使用できる商品券なので、5000円分の商品券で6,500円のものが購入できる。差額の1,500円がプレミアムな部分なのだが、これがとても紛らわしい。

現在の日本でのお札の種類は1,000円札、5,000円札、10,000円札の3種類存在している。
しかし、6,500円札なんて存在しないので、なれていないお釣りの計算を行うことになり、計算ミスが発生してしまう事がある。

さらに重要なことに近所の金融機関では商品券を受け付けてくれないことがある。前述したとおり、商品券の取り扱いが銀行にとってメリットがないことも理由の1つだが、お店側が商品券を受け付けれてくれる金融機関の銀行口座をもっていないことも理由である。

銀行側はマネーロンダリングを防ぐ必要があるので簡単には法人口座を作らせてはくれない。そうするとお店側は毎日商品券を数えたり、計算ミスで現金過不足を計上したりと面倒な作業を行う手間が増えるのにも関わらず、入金できる銀行が見つからないという、「現金と商品を失っただけ」という現象が発生してしまうのである。

それでもお客さんはプレミアム付商品券をどんどん使ってくる。お店は銀行で換金できないから商品券を断るとお客さんが離れていってしまう。これではプレミアム付商品券なんかはじめから無かった方が良かった…なんてことになるかもしれない。

対策としてのデジタル商品券

さらに今回のねりまプレミアム付商品券はお客さんにとっても嬉しくない規則がある。

公式ページのよくある質問で気になった箇所をピックアップしてみた。

まずは「購入について」を見てみる。

Q.複数回に分けて購入することはできますか?
A.お申し込み組数を、複数回に分けて購入することはできません。購入は1度のみです。

Q.購入した商品券の払い戻しはできますか
A.商品券の払い戻し、返金対応はできません

Q.商品券の転売・譲渡はできますか?
A.商品券の転売・譲渡は固く禁じております。

商品券を購入したが最後、自分で使うしかなく、お見舞いのお返しに商品券を配ったりできないようだ。また、1度しか購入できないので、しっかり計画的を練らないと、過不足が発生して予定が狂うだろう。

続いて「利用について」を見てみる。

Q.お釣りは出ますか?
A.お釣りは出ません。

Q.未使用の商品券の払い戻しはできますか
A.払い戻し、返金対応はできません。利用期間内に取扱店でご利用ください。

Q.商品券を紛失してしまいました
A.商品券の再発行はできませんので大切にお取り扱いください。

「商品券を一度売った後のことは知らない」という強い意志を感じる規約だ。
まるで「こちらはやることやったので、あとは好きにしな。」というメッセージを送っているようだ。

商品券の利用者から見ても、いいところは「30%のプレミアムが付いている」ことだけだが、上記の厳しい利用規約があるので、万引しないよう「じ~っ」と睨んでくる店主の監視下で欲しくもない商品を選んでいるかような不幸な状況しか想像できない。

このようにプレミアム付商品券はお店にとっても銀行にとっても利用者にとっても不幸を呼ぶ商品券であることがわかった。ではどうすればいいのか?そこでデジタル商品券の登場である。

デジタル商品券ならば、前述の

・銀行員が数える手間がかかる
・お店側が商品券を換金できない
・「じ~っ」と睨んでくる店主の監視下で欲しくもない商品を選ぶ

という問題を解決できそうである。こんなことを言うと

デジタル商品券はお年寄りが使えないからダメという意見もあるだろう。

だが、デジタル商品券はお年寄りが使えないからダメというのはすでに過去になりつつある。なぜなら、2020年の新型コロナウイルスが流行し始めた時に政府が出した緊急事態宣言後、シニア世代のスマートフォンの所持率は約8割に達しているのである。

※参考:MMD研究所調べ

このようにお年寄りでもスマートフォンのアプリとして利用できるデジタル商品券なら問題はなさそうである。

デジタル商品券の利用方法

デジタル商品券を利用するためのサービスとして、将来性から次の2つを紹介する。

1.モバイル商品券プラットフォーム by GMO

2021年8月から提供が開始されるモバイル商品券プラットフォーム byGMOは自治体が発行する「プレミアム付商品券」をデジタル化できるサービスである。これによって自治体は

1.商品券の販売
2.商品券の回収
3.商品券の保管
4.商品券の集計
5.商品券の精算
6.商品券の換金

といった、銀行とお店の負担になっていた業務負担を大幅に削減できる。特にデジタル化されることで商品券の利用状況のデータを細かく確認できることも可能になる。この仕組みにより商品券の販促効果が図るので政府、銀行、お店の3者にとってもwin-win-winだ。

さらに導入方法も印刷したQRコードをお店に用意するだけで使用できるので、世代を問わず利用が見込める。また消費者もあらかじめクレジットカードを使ってチャージをしておくと、ったApple PayやPayPayなどのキャッシュレス決済とほとんど同じ感覚で利用できるのだ。

紙の商品券だと数百円の残高が残っていても、ぴったり同じ金額の商品がない限り利用できないので少し損した気分だったが、デジタルなら1円単位まで使い切れるのもありがたい。

2.送金アプリ「pring」

pring(プリン)はスマホ決済に利用されているが、メインサービスは法人から個人への送金である。
ニチガスの検査員の報酬支払や交通費・経費の精算、地方自治体のデジタル商品券などがpringの利用実績である。法人の銀行振込に変わってpringを利用することで送金企業は振込手数料を削減できることが強みだ。

山口市ではpringを使ったデジタル商品券を採用した。商品券を購入するのにいちいち申し込み手続きや抽選家かを待つ事必要はなく、pringアプリ上で購入できる。これならちょっとした待ち時間にデジタル商品券を買うこともできね。

「うーん、pringって、法人から個人への送金サービスがメインであってデジタル商品券はそこまで力を入れていないようだ。これならGMOのモバイル商品券プラットフォームでいいかな」

ちょっと待ってほしい。確かにpringではデジタル商品券はあまり活発ではないかもしれない。しかし、これから先は大きな変化が起こりそうなのだ。

なんとpringは会社ごと7月13日にグーグルに買収された。日本のIT企業がGAFAに買収されることがあるなんてビックリだ。グーグルの技術力と資金力があれば、もっと便利な世の中に変えてくれるかもしれない。

まとめ

・プレミアム付商品券は、お店も銀行も消費者も嬉しくない
・シニア世代のスマートフォン普及率は緊急事態宣言後に8割超えた
・これからはデジタル商品券だ
・デジタル商品券は「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」とグーグルに買収された「pring」に注目

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